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よみがえる彩色歓喜院聖天堂

第6回 聖天堂の文化財「有形文化財の宝物」

 歓喜院聖天堂が有する有形文化財(工芸品・書跡)の宝物についてご紹介します。

 長い歴史と共にある歓喜院聖天堂は、本殿や貴惣門などの建造物のほか、それぞれの時代にゆかりのある貴重な有形文化財を有しています。


御正躰錫杖頭(国指定重要文化財)

 その筆頭に挙げられるのは、国指定重要文化財(工芸品)の「御正躰錫杖頭(みしょうたいしゃくじょうとう)」(錫杖(しゃくじょう))です。これは、寺伝によると、建久8年(1197)に、斎藤別当実盛(さいとうべっとうさねもり)外甥(がいせい)宮道国平(みやじのくにひら)が実盛の二人の孫と共に寄進した聖天堂の御本尊(ごほんぞん)であり、秘仏とされています。

 県指定有形文化財(工芸品)の「紵絲斗帳(ちょしとちょう)」と「鰐口(わにぐち)」は、美術品としてだけでなく、歴史的にも貴重な資料です。

紵絲斗帳(県指定文化財) 紵絲斗帳(県指定文化財)【拡大】

 「紵絲斗帳」は、銘文によると中国の嘉靖(かせい)年間(1522〜1566)に作られた織物で、二代目忍城主の成田長泰(なりたながやす)が奉納した品です。濃い藍色の布地に紅色で鳥や雲の模様を織ったものであり、時代を経て紅色は褐色に変化しましたが、味わい深い風合(ふうあい)となっています。なお、荻生徂徠(おぎうそらい)の『度量衡考(どりょうこうこう)』にも紹介されるなど、古くから多くの関心を集めています。

鰐口(県指定文化財) 鰐口(県指定文化財)【拡大】

 「鰐口」は、寺院や社殿の軒先につるし、布縄(ぬのなわ)を振って打ち鳴らす鋳銅製(ちゅうどうせい)の仏具であり、暦応2年(1339)の南北朝時代に奉献されたものです。鰐口の内側に陰刻(いんこく)された「武州福河庄聖天堂常住也」という銘は、室町時代初期の妻沼地域が「福河庄(ふくかわしょう)」と称されていたことを示しており、当時の行政的な位置付けを知ることができます。

 その他に、歓喜院が所蔵している市指定文化財(書跡)の「妻沼八景(めぬまはっけい)詩画幅(しがふく)」(豊洲(ほうしゅう)寺門静軒(てらかどせいけん)筆)と「勝海舟(かつかいしゅう)の書」は、共に歓喜院と当時の文化人とのつながりの深さを示す名品です。

第5回 聖天堂の彫刻(3)三聖吸酸