よみがえる彩色歓喜院聖天堂
第4回 聖天堂の彫刻(2)琴棋書画
聖天堂の拝殿、その正面には特徴的な彫刻がはめ込まれています。この彫刻の画題は「
聖天堂の琴棋書画の彫刻に目を向けると、左から「絵を見る子ども」、「碁を打つ人々」、「琴を弾く男」、「文字を読み書きする子ども」の順で配されており、彫られた人々の温和な表情が、見る人の心を和ませてくれます。
今回の修理工事では、塗装が完全にはがれていた碁盤の部分を、中国の元の時代に由来する碁石配置を参考にして描き直すなど、きめ細やかな彩色の復元が行われました。
この琴棋書画の彫刻は、寺社建築の一部に置かれることはありますが、聖天堂のように、拝殿の正面という建築のシンボリックな場所に配置されることは、あまり例を見ません。聖天堂と同じ権現造りの日光東照宮の「御本社」においては、拝殿の正面に荘厳な彫刻が飾られているところから見ても、聖天堂の彫刻の配置が特徴的であることが分かります。 つまり、龍などの威厳ある大きな彫刻ではなく、親しみやすい琴棋書画を用いたその彫刻は、聖天堂と庶民とのつながりの深さを示すものであると言えます。