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型紙

歴史

型紙とは、染色に用いられる型紙は、小紋・中形・友禅・更紗などの模様を染める時に使われる紙製の型のこと。
型紙は、奈良の正倉院や唐招提寺に、板締染に使用された型紙が残されています。室町時代には、「形置師」と称する職人が存在していました。
熊谷での型紙生産は、明治期で、三重県伊勢市、栃木県足利市についで全国3位を占めたとされますが、詳細は明らかになっていなっていません。創始者の井上元次郎は、江戸末期に市内別府に生まれ、伊勢の白子で修業を積み、天保13年(1842)に熊谷宿本町で型紙屋として営業を開始しています。
大正10年には、紗張り型が考案され、各産地とも型紙の生産だけでなく、反物類の生産効率を高めることが可能となりました。さらに、昭和24〜25年に実用化されたスクリーン型は渋紙を彫刻するという基本的な技術を根底から覆し、廉価品が量産可能となりました。
型紙の需要は、着物を常用しない洋装化とともに減少し、技術革新が手彫りの型紙をさらに減少させることとなり、奈良時代から綿々と続いてきた手彫りの型紙の歴史も現在ではかろうじて伝えられている状況となっています。

種類

型紙は、その用途、柄、彫刻の技術、型紙の製作法により分類されます。

用途別

着尺地型、手ぬぐい型、風呂敷型、のれん型、前掛け型、馬用腹掛の型

柄別

大紋―大きく家紋を染め抜いた布直垂。
中形―大紋と小紋の間の大きさの型紙。
小紋―細密な文様が施されたもの。

技術

   
〜引彫(ひきぼり)〜
縞彫りをする時に用いられるもので、細かい柄でなければ突彫り・道具彫りの代わりにもなる基本的な技法。
 
   
〜突彫(つきぼり)〜
最も古くより行われていた技法。小刀の刃を進行方向に向け、彫刻刀を上下に動かしながら突くようにして彫り進む方法。繊細な文様や抑揚のある線などを効果的に彫刻することができる。
 
   
〜錐彫(きりぼり)〜
刃先が半円形の錐を地紙に垂直にたて、柄尻を押しながら半回転させて穴をあけ、その点の連続で鮫小紋などの文様をつくる。
 
   
〜道具彫(どうぐぼり)〜
刃先を波状や菱形にした小刀で、型紙を押し突いて彫る。細かい文様を一突きで彫りぬくことができる技法。

型紙制作工程

型紙制作に要する時間は、原紙や型紙の寝かせに数年、室入り期間を加えると2〜5年を要します。
@法造り:原紙を既定の寸法に裁断して、原紙の繊維の縦横の方向に組み合わせ、型紙の設計を行う。
A紙つけ:斜位に立てかけた板に、原紙を柿渋で貼りつける。
B生紙張り:紙つけして2〜3日寝かせた生紙を乾燥させるために、ワラ刷毛で張り板に貼る。
C天日干し:張り板の両面に貼った生紙を1日程度天日で乾燥させる。
Dこそげ:天日乾燥させて生紙の表面についたゴミや柿渋のカスなどを包丁でこそげ落とす。
E室枯らし:燻蒸室に生紙を吊り、オガクズでいぶす。

型紙製作法

 
〜糸入れ〜
彫刻前の型紙を2枚に剥がし、それを重ねて文様を彫り、2枚の間に糸掛枠に格子状に張った生糸をはさみ柿渋で張り合わせる方法。
 
 
〜糸掛け〜
同心円の内部のように文様が抜け落ちてしまうような場合に、文様を固定するために絹糸でかがる方法。
 
〜紗張り型〜
彫刻した型紙の裏面に細かい絹紗を漆で貼り固める方法。
 
〜スクリーン型〜
生地幅の枠にナイロンや絹などの紗や細かい金網などの基布を張り、これに文様となる図柄に合わせて渋柿やプラスチックの切込みを貼付する方法。