第38話「代・台」ーだいー |
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旧江南町内には同じ文字や、同じ発音をする文字を使った地名がいくつかあります。本文ではその一例を取り上げようと思います。
「代」・「台」は一文字でも使われますが、合体文字の用例もあり、「代(千代・成沢)・台(塩)・明賀台(塩)・西の台(小江川)・東台(須賀広)・台原(成沢)」の7例がみえます。いづれも台地上・丘陵上に分布し、低地にはあまりみえません。ダイの音は台・代・大など、使用される文字が多いため文字の意味は地名を考える時にはあまり重要ではありません。
とくに「ダイ」は日本各地に残る地名ですから、土地の形状・特性を表わす地名と考えられています。この用例では周囲より高〈平坦なところの意味を持つ文字として「台」がみえる場所が大半です。成沢地内の「代」の場合でも、明治以前には「台」が使われていたらしく新編武蔵風土記稿には「台」の旧字がみえます。
このように「ダイ」の地名が各地に残り、書き表わされる文字が多い事実は、発生が古く使われた時代が長いと考えられています。さらに多くの時間と使用文字の選択を経るうちに由来の差ができたと考えられます。「台」は高台・台地のように、地形的に河川海岸の段丘を示し、物の台に似るところから生まれたとされています。
これは全国的に共通しています。千代(熊谷市)と仙台(宮城県)と川内(鹿児島県)はいづれも川岸段丘に位置する地名であり、用字は異りますがいづれもセンダイと読まれ、本来「台」の文字が使われるようです。
「代」が多く使われる近畿地方では、坪・区の土地区画を意味し、東代・西代・北代・南代・上代・下代のように相対して呼ぶ場合が多くみえます。この場合、土地区画を代=シロと云った古代以来の土地制度が元のようです。江南地域に残る西の台や東台は相対しているかのようですが、地区が異り前者は小江川地内西の集落との関係からみて、西方山林中の平坦地を指すと思われます。後者の場合には和田川に面した台地に当たるので「台」の意味と考えられますが、良い耕地であることから「代」の可能性も否定できません。
市内に分布する他の代・台地名の大半は、地形的に高く平坦な場所の意味と考えられます。台地下にある台原の地名も沖積地内に残る自然堤防上に位置するので、やはり、「台」の意味が強いようです。ただ、明治初年に編さんされた武蔵国郡村誌には「台郭」とみえ、以後台原への変更があったかもしれません。
「ダイ」の付く地名は新期の宅造地を示すように現在でも生れています。台地・大地・代々と広く・大きく・長く・安定したところとのイメージを「ダイ」は古くから持ち続けていたようです。
江南台地崖線部近景
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