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鹿児島寿蔵(かごしまじゅぞう)(1898-1982)

人形作家、歌人。福岡市生まれ。有岡米次郎に博多人形製作を学び、1932年紙塑人形を創始、1933年日本紙塑藝術研究所を開き、1934年人形美術団体甲戌会を結成する。アララギ派の歌人でもあり、島木赤彦・土屋文明に師事。1961年紙塑人形の人間国宝となる。
昭和20年3月より昭和27年7月まで熊谷に疎開した際に詠んだ歌。
「東京の わが家の焦土 見るよりも こころは痛し 燃ゆる熊谷」
『求青』「熊谷炎上」
「鐘楼に 新藁つみて にぎはしき み冬とぞ思ふ 上之のみ寺」
『求青』「田居吟」


鹿児島寿蔵歌碑(龍淵寺(上之))

「麦の中の 土くれこなす 老ひとり おそれなき代の 相とおもふ」
『求青』「仮住小圃」
「感性の うすれ易き 農をいふ 友よまづ見よ 今日の泉のひかり」
『麦を吹く嵐』「上之の泉」
「東京に 二日すごして よごれたる 吾が手と思ひ 蜜柑むきをり」
『やまみづ』「冬の風見矢」
「幾日の 都との塵労に 過ぎて来て 吾が偸安は 麦の青の中」
『やまみづ』「田園偸安」
「春の雲 うごくともなきに 風の音 するどくこもる 麦丘の間」
『群緑』「東京・熊谷・東京」
「吾が妻は ビールびんにて 麦の穂を たたきはじめぬ 日かげりしかば」
『群緑』「或日又或日」
「農家には 家山といふ ケヤの森 小高くありて 春の芽おそし」
『群緑』「三月の麦畑」
「東京に 帰らむこころ たゆたひて 今日も見わたす 上之の春の」
『群緑』「沈黙」
「北風の まともにきたる 此の塀を ああ幾度か怒り つくろひき」
『群緑』「熊谷惜別」
「帰るべき ときは来りぬ 今日のため 荷をもちくるる 土地びと数人」
『群緑』「熊谷惜別」
「光薄き 薮にひそまり 花をもつ 熊谷草の さだめ静けし」
『牡丹の花・朝と夕』
「熊谷草 なくてかなはじと 星溪に 植えたるか今 花をみるなり」
『牡丹の花・朝と夕』
「熊谷草 なくてかなはじと 星池に 植えて福布くしき 花を咲かしむ」
*昭和55年星溪園で詠んだ句
   
鹿児島寿蔵句碑(星溪園)  クマガイソウ

参考文献
昭和29年 『求青』 鹿児島寿蔵 白玉書房
昭和29年 『麦を吹く嵐』 鹿児島寿蔵 清新書房
昭和40年 『やまみづ』 鹿児島寿蔵 新星書房
昭和42年 『群緑』 鹿児島寿蔵 新星書房
昭和61年 『牡丹の花・朝と夕』 新星書房