「浄安寺千体地蔵」は熊谷市御正新田に所在する浄安寺本堂の南西側に位置する地蔵堂に安置され、本尊の地蔵菩薩を中心に素彫りの地蔵が約650体収められていた。地蔵の多くが、一本造りの木造仏で、全長10〜20センチメートル前後のものが多く、材質は、桐・柘植・杉が確認されている。江戸時代後期から現代に至る時期に奉納された仏像であり、仏師「
西半」が彫り上げたものや一般庶民が製作し奉納したものも多い。本尊の仏像の様式については江戸時代中期頃の制作として推定できる。奉納年や、願主名などを墨書・陰刻した像なども残されており、平成9年(1997)に当時の江南町の有形文化財(彫刻)に指定された(後に熊谷市指定)。
平成25年(2013)9月16日に発生した竜巻及び台風18号により、熊谷市内では多くの被害が生じ、浄安寺(御正新田)における地蔵堂も被災した。その直後において、千体地蔵の保管を目的とした文化財レスキュー事業を実施し、洗浄などの初期の保存修理事業が行われた。平成26年(2014)、本尊の修復作業後、東洋美術学校による千体地蔵の調査研究が開始され、各地蔵を把握するための再ラベリング、保存箱の整備、燻蒸処理、公開活用に向けた検討などが進められた。現在、千体地蔵は、本堂にて保存継承され、地域の信仰の歴史を今に伝えている。