「ワー見て、きれい!!」。
1オクターブ高い声が、静かな整理所内に響き渡りました。
彼女は、東別府の一本木前遺跡の古墳時代前期の方形周溝墓の埋葬施設から出土した人骨に付いた土を少しずつ濡らしながら、竹串とピンセットで除去するという、気の遠くなるような作業をしていたのです。
驚いた全員がそこに集まってのぞき込むと、土の中から直径1mm程の青色をしたガラス質の物体が、仰向けに葬られた死者の胸骨の中央に、その一部を覗かせていたのです。
「骨に気をつけて、もう少し回りの土を取っていって。ゆっくりね。」という調査員の指示にうなずくと、彼女は再び真剣に作業にかかりました。2時間後、再び歓声と共に直径4mm、厚さ3mmで中央に1.5mm程の孔が穿たれた青いガラス小玉の全貌が現れました。
孔は、上下を向いていました。青いガラス小玉は、直径わずか4mm程の大きさでしたが、それは鮮やかで、黄茶色化した骨との間に見事なコントラストを見せ、見る者の目を強烈に引きつけずにはおかないものでした。
では、胸の中央にこのような美しい小玉を飾って葬られた人物は、この一本木前遺跡の方形周溝墓群の中で、どのような地位の人だったのでしょうか。謎は深まるばかりです。
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